アメリカの自動車会社、TeslaのCEO(最高経営責任者)でもあり共同設立者であるイーロン・マスク(Elon Reeve Musk)。その類稀なるビジネスセンスとSNS上での破天荒な発言などから、他の自動車会社のCEOとは別の意味で彼は有名となっております。
そんなイーロン・マスク氏について今回は解説していきます。
自動車会社Tesla(テスラ)について
イーロン・マスク氏本人の解説の前に、まずはイーロン・マスク氏がCEOを務める自動車会社Tesla(テスラ)について触れていきましょう。テスラはニコラ・テスラという、電気技師であり物理学者である偉人を由来とした社名で、その由来通り、自動車会社としては異色な「電気自動車・バッテリー自動車」を中心とした開発・販売を行っています。
電気自動車は文字通り電気を主動力として、燃料を燃やして動くような従来のガソリンエンジンやハイブリッドエンジンとは異なり、電気で走行可能な自動車です。電気自動車は、限られた資源である化石燃料を使うことがなく、燃料を燃やすことで発生する一酸化炭素が発生しません。排気ガスによる環境汚染や、排気管が破損することで車内に一酸化炭素が充満して一酸化炭素中毒になるという事故も発生せず、さらには燃焼爆発によってエネルギーを生み出すガソリンエンジンよりも、遥かに静音性に優れているといったメリットがあります。
ただ、数分の給油で十分に燃料タンクを満たすことができるガソリン車と比較して、数十分から1時間以上の充電を必要とするといった、運用上無視できないデメリットが電気自動車自体の課題として存在しており、まだまだ研究発展の余地がある製品であると言えます。
テスラでは電気自動車専門の製造だけでなく、ソーラーパネルや蓄電器の製造販売も行っています。
テスラを「自動車メーカー」として認識するとユニークかも知れませんが、「電機メーカー」として捉えると特別なことをしている会社ではありません。また集団訴訟などを何度か起こされていますが、テスラの本社があるアメリカは訴訟大国であるため、集団訴訟を起こされることはアメリカにおいてはあまり珍しいことではありません。
イーロン・マスクという人物
前述した通り、テスラのCEOはイーロン・マスクです。自動車会社は数あれど、そのCEOとしてここまでアイデアが豊富で、フットワークの軽い人物はそういないと言えるような人物です。
基本的なプロフィールとしては、1971年の6月28日に南アフリカで生まれ、1989年にカナダへと移住し、2018年現在までに4つの会社を起こしています。
最初は1995年にZip2社という、オンラインコンテンツ出版ソフトを提供する会社を弟と一緒に起こし、この会社はコンパック社という会社に買収されることになります。次は、1999年にはX.comという会社の共同設立者となります。このX.com社はオンライン金融サービスや電子メールによる支払いサービスを行う会社なのですが、設立1年後にはコンフィニティという会社と合併してしまいます。その結果誕生したのが、PayPalという会社です。
そして2002年には、宇宙輸送ロケットを開発する製造するスペースXという会社を起こします。最後に2006年、太陽光発電会社ソーラーシティを従兄弟と立ち上げ、CEOを務める事に。
さて、ここまで彼が立ち上げた会社についてざっと紹介していきましたが、肝心なテスラが無い事には気づきましたでしょうか?実はテスラという会社は、イーロン・マスク氏が個人で立ち上げたわけではなく、元々あった電気自動車会社テスラに対し2001年に投資を行い、同社最初のモデルを所有することになり、それから2008年に会長並びにCEOを務めることになったという経緯を経ています。つまり2018年時点では、スペースX、ソーラーシティ、テスラという3社のCEOを務めていることになります。
SNS上の発言でTeslaの株価を乱高下させる
さて、このような経歴を持つイーロン・マスク氏ですが、良くも悪くも歯に衣着せぬ物言いをすると人物と言えるでしょう。Twitterなどでも、大企業の社長とは思えない”軽率”な発言が目立ちます。
まず1つ取り上げるとすれば「子供を助けたダイバーを小児性愛者と呼んだ」件。これは2018年の6月、タイにおいて起きた地元のサッカーチーム「ムーパ・アカデミー」のコーチと生徒合わせて13名が、タムルアン森林公園内にあるタムルアン洞窟に閉じ込められたという「タムルアン洞窟の遭難事故」の際の出来事が発端です。
軽く事件の経緯を話すと、当時タムルアン洞窟のある場所は雨季であり、大雨が降ったことで洞窟内に大量の水が流れ込み、入り口のほとんどが浸水し、洞窟潜水をしたりしないと洞窟内にいた遭難者を助けられないというような状態に陥りました。
救援物資を届けた元海軍特殊部隊の軍曹(この際の功績から少佐に特進)が亡くなるといった出来事も起きたこの事件において、イーロン・マスク氏はこの少年たちを救出するために潜水艇を提供すると言い、その発言に多くの称賛が送られました。が、この発言の直後に英国人ダイバーの「バーノン・アンズワース」氏によって遭難者の救出が行われます。そしてアンズワース氏はこのイーロン・マスク氏の発言に対し「(イーロン・マスク氏の発言は事件に必要な)知識を持たない単なるPR活動」と批判します。実際、この事故において遭難者を救出する方法は3通り検討されており、最終的には候補の1つである「ダイバーによる救出」が成功し、残り2つの方法は「地上から採掘」「ポンプで排水」であって、潜水艇による救出ではありません。つまり潜水艇があったとしても結局ダイバーしか通れなければ大した意味は無いため、そういった意味で「その時の現場に必要とされる知識が無い、ただ単に自分は救援をしたという事実を広めたいだけのパフォーマンスだ」という意味で言った批判だと考えられます。
そレに対しイーロン・マスク氏はこのアンズワース氏の発言に「この小児性愛者には悪いが、お前が自ら招いた事だ」と反応するような投稿を行いました。実際ただのPR行為だったのかどうかは置いておくとしても、いくら批判されたからと言って命を張って遭難者の命を救った者に対して、投げかけるべき発言ではありません。事実この発言によってイーロン・マスクは炎上し、テスラの株価が3.4%値下がりしてしまうなどという結果を招いてしまいました。後日謝罪をしていますが、本来であれば反応するにしても表面上だけでも反省しているような反応を返していれば、まだ好評価を得られたでしょう。
そして何よりも酷いのがこの事件の後、アメリカのとある記者がこの起訴されるかもしれない発言に対してのメールを送った所、アンズワース氏の事を「小児レイプ犯」と罵倒するような返事を書いたメールが返ってきたという事を公開しています。
この発言以前にも、株価を非公開にするとSNS上で宣言して株価を乱高下させたり、エイプリルフールに「テスラが破綻した」と言い株価を最大8%も下落させるなど、とにかくSNS上での問題発言が目立つ人物です。
社の中で最も厳しいワーカホリック、そして宇宙の探求者
イーロン・マスク氏の特異な点は他にもあります。
1つは「ワーカホリック」。もう1つは「火星移住を目指している」こと。前者に関しては社員が「厳しいことを言うが、誰よりも仕事に取り組んでいて、机の下で寝ている姿も良く見た」と語るほどです。
マスク氏は休暇中に故郷の南アフリカに訪れた際、マラリアにかかって死にかけた事があり、この経験から「休暇は取らないほうがいい、死にかけることがある」と、半分冗談ぽく語っています。2002年から2018年まで、12年間でたった2週間しか休暇をとっていないと言われています。
火星移住に関してですが、宇宙輸送用のロケットを開発製造するスペースXを立ち上げた他に、何度か火星移住計画を口にした事があります。ただ、現実問題として火星のテラフォーミングは少なくとも現時点では不可能とされており、火星移住計画が本気であったとしても冗談であったとしても、少なくとも何かしらの技術革新や常識をくつがえすような発見が無い限りは、イーロン・マスク氏が生きている内に火星のテラフォーミングが行われることはあり得ないと考えられています。
まとめ
以上、破天荒なテスラCEOイーロン・マスク氏について解説いたしました。
ここで解説した出来事の他にも、”テスラ社の車のモデル名が「S」と「X」と続き、三番目のモデル名を「E」にしようとして、その理由に気づかれた事から泣くなく反転した「3」にした”というようなエピソードもある、良くも悪くも個性的な人物がイーロン・マスク氏です。