現在の日本では自動車文化が加速度的に広がり、日常生活には欠かせない交通手段となっています。大都市圏に住んでいる方であれば、公共交通機関の発展もあり、そこまで自動車の重要性を感じないという方も多いかもしれませんが、地方に目を向けると一家に複数台の自動車を所有している家庭も珍しくありません。
しかし、自動車という物は、一度購入すれば一生同じ物に乗り続けるといった物ではなく、どれだけ大事に使用したとしても、いつか廃車にしなければならない物で、処分の事も考えなければいけません。近年では、そういった廃車の廃棄処分場不足により処分費も徐々に高騰してしまい、自動車の不法投棄や不適正処理の懸念が生じていました。また、カーエアコンに冷媒として充填されているフロン類等は適正に処理されなければ、オゾン層破壊や地球温暖化問題等を引き起こす為、これらを適正に処理する為に2005年に自動車リサイクル法が定められたのです。
自動車リサイクル券は、自動車リサイクル法の制定と共に導入された物で、新車購入時や廃車の際に必要になる物です。今回は、ドライバーなら知っておきたい、自動車リサイクル法や自動車リサイクル券についてご紹介したいと思います。
自動車リサイクル法の背景について
まず自動車リサイクル法の背景について見ておきましょう。この法律がどういった物かというと、
ゴミを減らし、資源を無駄遣いしないリサイクル型社会を作るために、クルマのリサイクルについてクルマの所有者、関連事業者、自動車メーカー・輸入業者の役割を定めた法律
引用元: 経済産業省HP 自動車リサイクル法ってどんな法律?
この法律が制定された背景には『廃車の最終処分場不足』があるのです。そもそも皆さんは、年間にどれほどの自動車が廃車にされているかご存知ですか?実は、自動車の廃車台数は年間で約350万台とも言われており、自動車の約80%は鉄などの有用金属から製造されているのでリサイクルされるのですが、残りの20%はシュレッダーダスト(自動車を解体した後に出るプラスチックくず等)として埋め立て処分されていたのです。
しかし、最終処分地とされる埋立地も有限であり、処分場の容量は当然不足するようになりますよね。これに伴って、自動車の処分費用が高騰してしまい、自動車の不法投棄や不適正処理が社会問題になってしまいました。これに加え、エアコンに使用されるフロンなど、環境に負荷を与える物質の処理も問題になりました。これらの処理を適正に行えるよう体制作りする為に作られたのが自動車リサイクル法だと考えておいてください。
自動車リサイクル券のシステム
自動車リサイクル法の背景については分かりましたね。この自動車リサイクル法の制定により、自動車の所有者には『使用済自動車の排出者』としてシュレッダーダスト、エアバッグ、フロン類の処分にかかる費用の負担が『排出者責任』の役割として求められるようになり、自動車の所有者はリサイクル料金を負担しなくてはならなくなったのです。
リサイクル料金が義務となったとしても、ここまでの背景を見れば納得はできますね。
リサイクル料金っていくら?
実際に自動車の所有者が負担するリサイクル料金は、車種によって異なっており、基本的に新車購入時に『預託金』として費用を支払う物です。金額の違いは、シュレッダーダストの発生量に関わる自動車の車種・車両重量やエアバックの数、エアコンの有無など3品目が関係します。リサイクル料金の目安は以下の通りです。
自動車の車種 | リサイクル料金の目安 |
軽・小型乗用車(コンパクトカー) | 7000円~16000円程度 |
普通車 | 10000円~20000円程度 |
中・大型トラック | 10000円~16000円程度 |
バス | 40000円~65000円程度 |
車種によって上記の金額のリサイクル料金を支払います。そして、そのリサイクル料金の支払いを証明する預託証明書が『リサイクル券』なのです。リサイクル券は自動車の廃車時に必要となりますので、間違って捨ててしまったり、紛失してしまう事がないように車検証などと共に大切に保管しておきましょう。
自動車の売却や中古車購入時のリサイクル券について
意外と混乱を招くのが、自動車の売却時や中古車の購入時のリサイクル料金の支払いです。新車購入時に支払ったリサイクル料金ですが、自分は廃車せずに中古車として売却した場合、何の為のお金か分からないですよね。自動車リサイクル料は『その自動車の最終所有者が支払う』という事を覚えておけば混乱しなくて済みます。念のため、各ケースを簡単にご紹介しておきましょう。
自動車を売却する時
リサイクル料金を支払った自動車を中古車として売却する場合であれば、売却先の買い取り業者からあなたが支払ったリサイクル料金を受け取る事が出来ます。つまり、自動車の査定額に加えてあなたの支払ったリサイクル料金を別で受け取れるという事です。忘れずにリサイクル料金も受け取るようにして下さい。当然ですが、リサイクル料金を支払っていない場合には受け取る事はできません。
中古車を購入する場合
上記とは逆に、中古車を購入する時ですが、すでにリサイクル料金が支払われている場合には、中古車の購入金額に加えて、リサイクル料金を支払う必要があります。中古車購入の場合は、リサイクル料金が車体価格とは別の『諸経費』等と計上されている事が多いため、諸経費にリサイクル料が含まれているのかきちんと確認しましょう。リサイクル料金を支払ったら、忘れずにリサイクル券を受けとり大切に保管してください。
自動車リサイクル券を無くしてしまったらどうする?
それでは最後に「リサイクル券を無くしてしまった…」といった場合にどうすればいいのか?といことについても触れておきましょう。本稿でも「廃車時に必要になるのでリサイクル券はなくさないように大切にしましょう!」と何度も説明していますが、絶対に紛失しないとは限りませんよね。特に自動車は、大切に乗っている方であれば、廃車になるまでに十数年の年月が経過するなんてこともありますので、車検証と一緒に保管していると思ったのになくなっていたといった事も珍しくありません。
このようにリサイクル券を無くしてしまった場合には「廃車に出来ないのでは…」「再度リサイクル料金を払うのか?」等と不安になってしまうかもしれませんが、安心してください。
実は、リサイクル券は紛失してしまったとしても再発行の必要はなく、自動車リサイクルシステムのホームページからリサイクル券と同等の証明ができる「自動車リサイクル料金の預託状況」が発行できるようになっています。廃車時等、リサイクル券を提示する必要がある場合にはこれを印刷して提出すれば問題ありません。
まとめ
今回は、自動車リサイクル法やリサイクル料金についてご紹介してきました。近年世界中で自動車が普及しており、それに伴って地球環境への負荷が懸念されるようになっています。自動車は人間の生活には欠かせないものとして、皆さんの生活の一部を形成しているものでしょう。今更、自動車の使用を禁止する事など不可能な事ですし、ドライバー一人一人が地球環境の事を考えて、大切に自動車を扱いたいものですね!