自動車を運転している時には、誰でも事故に遭う事は嫌でしょうし、細心の注意を払っています。しかし、どれだけ自分が注意を払っていたとしても、100%絶対に事故に遭わないとは言えません。
もちろん、一言に『事故』と言っても、『自宅の駐車場の壁でバンパーを擦ってしまった』等、自動車の走行には全く問題ないような事故から、エンジンまで損害が出るような大きな事故まで、状況によって様々でしょう。そして、こういった大小関わらず、何らかの事故にあった自動車の事を『事故車』と表現すると思っている方は多いのではないでしょうか?
確かに『バンパーを擦った』程度であっても間違いなく事故と言えますので、『事故車』と言っても問題ないのかもしれません。しかし、中古車販売業者などが言う『事故車』は、一般人の言う『事故車』とは大きく定義が違う場合があります。
この『事故車』の定義は、中古車の購入や自動車を売却したいと思った時にとても重要なポイントになるので、本記事でご紹介する内容は、ぜひ覚えておきましょう。
事故車と修復歴車では自動車の価値が大きく異なります
『事故車』とは、その言葉から「事故を起こした自動車」「事故に遭った自動車」という意味と捉える事ができます。しかし、こういった「事故に遭った自動車」だとしても、「バンパーを少し擦った」程度の軽微な事故や、エンジンまで損害を受けている大事故までその状況は様々です。言葉の意味から考えると、前述の様な事故の大小に関わらず、とにかく事故に遭った自動車は全て『事故車』と言えますが、中古車業界ではそうではないのです。
実は中古車業界でいう『事故車』とは『修復歴車』の事を指しており、この『修復歴車』とは自動車の骨格部分を損傷して、修正や交換をした経験がある自動車の事です。
あまり聞き慣れない言葉ですので、以下で『修復歴車』の定義も説明しておきましょう。
修復歴車の基準ってどこ?
まず大前提として『修復歴車』とは、誰かが勝手に言葉を作って決めているものではありません。この『修復歴車』の定義は、自動車公正取引協議会・日本自動車査定協会・日本中古自動車販売協会連合会・自動車販売協会連合会が中心となり1997年に定めたものです。そして勘違いしてはいけないのが、修復歴車は『事故歴の有無に関わらず』骨格部の修正や交換を経験した車両のことだという事です。『事故車』なのに事故の有無すら関係ないというのは驚きですね。では、以下に『修復歴車』と判断される骨格部分もご紹介しておきます。
- フレーム(サイドメンバー)
- フロントクロスメンバー
- フロントインサイドパネル
- ピラー
- ダッシュパネル
- ルーフパネル
- ルームフロアパネル
- トランクフロアパネル
- ラジエータコアサポート(交換でなくフレーム修正の場合は修復歴車扱いになりません。)
『修復歴車』と判断される骨格部は上記のような箇所です。このような『修復歴車』は自動車としての価値は大きく下がります。逆に、極端な事を言えば、上記以外の全ての箇所を修理したとしても、中古車業界では『事故車(修理歴車)』の扱いになりません。
一般的にですが、見た目も遜色なく修理され、不具合も見られない自動車だとしても、『修復歴車』は同レベルの中古車より30~40万円も査定額が低くなると言われます。
修復歴車のデメリット
それでは『修復歴車』にはどのようなデメリットがあるのかといった点にも触れておきましょう。事故や経年劣化に関わらず、『修復歴車』になった場合には、上述のようにその自動車の価値は大きく下がってしまいます。その為、『修復歴車』を下取り査定等に出したとしても、納得できるよう査定価格が付くような事はほとんどないと言えるでしょう。また、『修復歴車』となるような骨格部分の修理となると、その修理費用も数十万円以上かかるという事も当たり前にあり、修理後の自動車の価値以上のお金を掛けて修理をしなければならないなんてことも珍しくありません。こういった場合には、特別その自動車に思い入れがあるといった理由がない限りは、廃車にして新しく自動車を購入する事を検討した方が良いでしょう。
他には、『修理歴車』を中古車として購入する場合です。『修理歴車』であってもプロの整備士が修理を行う物なので、素人目ではとても事故車とは思えないような自動車になります。そして、中古車としての販売価格は、同じレベルの中古車よりも圧倒的に安く販売されています。価格が安いという事はメリットの様に思えますが、しばらく乗っていると異音がするようになったり、軋みが出たりと不具合を起こす可能性が非常に高くなります。中古車を購入する時でも、価格だけで判断せず、修復歴がない自動車を選択する方が当然望ましいといえます。
査定時には『修復歴』はきちんと伝えましょう
修復歴がある自動車は、大きく査定額が減額されることもあり、修復歴車だという事を隠して下取りに出そうとする人も多いです。しかし、『修復歴がある』という事は申告する義務がある為、査定時には必ず伝えるようにしましょう。もちろんどのような事故に遭ったという事の説明は出来るでしょうが、どのような修理を行ったという事は素人には分からない物なので、分からない物は分からないと伝えましょう。
修復歴は、素人目で見ればどこを修理したのか分からないほどキレイに仕上がっている為、言わなければ分からないと隠そうとする人がいます。しかし、相手は査定のプロなので、ほとんどの場合すぐにバレてしまい、相手の印象を悪くするだけで終わります。万が一、査定時にごまかせても「後から修復歴車とわかった場合はペナルティがある」等といった契約書を用意している会社がほとんどですので、後々、裁判沙汰になる事もあります。査定額を少しあげるだけで、裁判沙汰の可能性があると考えると、正直に申告する方が絶対にお得です!
修復歴車は廃車買取業者に売却する方がいい?
ここまでで、中古車業界でいう『事故車』がどういった物で、『事故車』と判断される自動車の定義も何かということが分かっていただけましたね。上述した通り、『事故車(修復歴車)』になってしまうと、その自動車の価値は大きく下がってしまい、完璧に修理できたように見えても、売却を考えた時には納得のいく査定価格がつく事はなくなります。また、修復歴が付くような修理となると、その修理費用も高額になり、修理した後の自動車の価値よりも高いお金を請求される事も珍しくありません。
こういった場合、わざわざ自動車の価値以上のお金を掛けて修理するのはバカらしいといえます。したがって、修理しても修復歴になるような自動車は、廃車にして新しい自動車を購入した方が良いです。
「廃車するにしてもお金がかかる…」と思うかもしれませんが、『廃車買取業者』であれば損傷が大きい自動車でも高価買取りしてくれます。廃車買取業者は、自動車を中古車として査定するのではなく、鉄やアルミなどの資源や、まだ使えるパーツをリサイクルパーツとして査定します。その為、自動車の『修復歴』等は特に関係なく、単純にその自動車の資源的価値を見てくれるのです。
現在、『修復歴車』が売却できなくて困っている方や、事故で自動車の修理をしたいけど修理費用が高くて困っているといった方は、一度廃車買取業者に連絡してみてはいかがでしょう!
まとめ
今回は、一般の方が言う『事故車』と中古車業界がいう『事故車』の違いについて、その定義からご紹介しました。
事故車とは、その言葉の意味から考えれば『事故を経験した自動車』の事を指すはずですが、中古車業界が言う『事故車』は、事故の有無に関わらず、あくまでも骨格部の修理を経験したことがある『修復歴車』の事を指しているとわかりましたね。
『修復歴』がついてしまった自動車は、いくら見た目が綺麗でもいつ不具合が起こるかわからないという事もあり、一気に自動車の価値は下がってしまいます。その為、万一、事故を起こしてしまった場合には、自動車を廃車買取業者に売却し、新しい自動車を購入するのが一番賢い方法かもしれませんね!