自動車のトラブルには様々な物がありますが、その中の一つに『オーバーヒート』があります。『オーバーヒート』という言葉自体は、自動車を所有していない人であっても一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。しかし、「オーバーヒートが起こる原因って何?」と聞かれたとしても、正確に答えられる人と言うのは少ないかもしれませんね。
オーバーヒートは、単純に言うとエンジンの温度が上昇しすぎる不具合の事です。こう聞くと、大した問題に思えないかもしれませんが、オーバーヒートはエンジンに大きなダメージを与えてしまうとても恐ろしいもので、エンジン載せ替えが必要になり莫大な修理費用がかかったり、最悪の場合は廃車にせざるを得ない…なんてこともあるのです。
自動車のオーバーヒートによる故障を防ぐためには、「なぜオーバーヒートが起こるのか?」といった原因や、どのような症状が出たらオーバーヒートの疑いがあるのかしっかりと知っておくことがとても重要です。万が一、オーバーヒートを引き起こしたとしても、正しい対処法を取れば最悪の事態を免れる事も出来るかもしれませんので、ぜひ覚えておきましょう!
オーバーヒートって何?
それでは最初に、オーバーヒートがどのような物なのかご紹介しておきましょう。オーバーヒートとは、冒頭でもご紹介した通りエンジンの本体が熱くなりすぎる現象の事を言います。自動車が走行する時には、エンジンが凄まじい勢いで回転し、走行の為のエネルギーを生み出しているのですが、この時には非常に高い熱も発します。そして、発生した熱によってエンジンの温度が上昇しすぎる事を防ぐため、冷却システムがあるのです。しかし、何らかの原因でこの冷却システムに不具合が発生し、うまくエンジンの冷却が出来なくなった場合にオーバーヒートしてしまうのです。
オーバーヒートは、エンジンオイルが熱によって分解され使い物にならなくなったり、シリンダーガスケットの破損、エンジン本体の焼き付きなど、致命的な自動車の故障を引き起こす非常に恐ろしいものだと知っておきましょう。
自動車の運転中に以下の様な現象があった場合、オーバーヒートを疑った方が良いでしょう。
オーバーヒートによる症状
エンジンがオーバーヒートしてしまうと様々な症状が現れます。何らかの違和感や症状に気づいたのに、「まぁ大丈夫か!」等と放置して走行を続けてしまうと、エンジンへ大きなダメージを与えてしまう事になります。
オーバーヒートに気づくポイントは『水温計と走行時の感覚』ですので、なかなか難しい面もありますが、以下にご紹介するような症状が運転中に出た場合、すぐに安全な場所を探し、自動車を停止してエンジンを確認しましょう。
オーバーヒートの初期症状
- メーターパネルの水温計が『H』マーク近くまで上昇する
- 走行時にアクセルを踏んでも、思うようにスピードアップしない
- アクセルを踏むとノッキング音がする、エンジンの回転数が不安定になる
オーバーヒートの中期症状
- メーターパネルの水温計が『H』マークを超える
- 走行中、エンジンからキイキイ・カラカラの様な異音がする
- エンジンから水蒸気が立ち上がる
オーバーヒートの最終段階
- 冷却水漏れなどがあった場合『C』マークを指します
- オイルが焼ける臭いがしたり、エンジン内部から異音が聞こえる
- 最終的にアクセルを踏んでもエンジンが停止し、動かなくなる
オーバーヒートが起こった時に出る症状を、段階別でみると上記の様になります。自動車は何らかの不具合があった場合には、きちんとサインが出ますのでそれを見逃さないようにしましょう。上記の様な症状が出ているのに放置してしまうと、最終的にエンジンが焼き付いてボンネットから煙が上がるなど致命的な故障を引き起こします。
オーバーヒートの原因
それでは次は、オーバーヒートはなぜ起こるのか?という点について考えてみましょう。オーバーヒートが起こってしまう原因は、一般的に『冷却水・冷却システムの不具合』『潤滑システム系の不具合』の2つが考えられます。下で2つの不具合について詳しく見てみましょう。
冷却水・冷却システムの不具合
自動車には、エンジンの温度が上昇しすぎないように冷却システムがあります。
まず確認したいのが冷却水の水量です。リザーバータンク内の冷却水は自然蒸発する場合もあり、水量が十分にあるのか常に注意しておく必要があります。ただし、冷却水が『短期間に急激に』蒸発して減る等といった事はないため、大幅に水量が減っている場合等は、ラジエーターキャップやウォーターポンプなどの劣化による冷却水漏れが考えられるため、整備工場で見てもらいましょう。他にも冷却システム自体の不具合で冷却性能が落ちる場合もあります。
エンジンオイル等『潤滑システム』関係の不具合
自動車のエンジンがスムーズに回転する為には、エンジンオイルは不可欠です。しかし、エンジンオイルは、使用すればするほど劣化が進むものですので、定期的な交換が必要になります。この様な整備を怠り、エンジンオイルの劣化や不足が起こると、エンジンの摩擦が激しくなり、摩擦熱によるオーバーヒートを引き起こすのです。
オーバーヒートした時の対処法
それでは最後に、オーバーヒートが起こってしまった時の対処法をご紹介しておきましょう。自動車の運転中に、上記でご紹介したような『何らかの違和感』を感じた場合には、速やかに安全に停車できる場所を探し、自動車を停めて原因を確かめましょう。オーバーヒートの症状が疑われる場合には、エンジンを止め、ボンネット開けて確認する必要があります。この時、エンジンルームが非常に熱くなっている可能性があるので、火傷しないように注意して開けましょう。ボンネットを開けた際に、蒸気が立ち上がる、または火傷するほどの熱気を帯びているといった場合には、すぐにロードサービスに連絡しましょう。
以下で、状況による対処法をご紹介しておきます。
STEP1 冷却水の残量を確認しましょう
冷却水の残量を確認し、残量が十分にある場合には冷却システムを止めないようエンジンは付けておきましょう。残量が減っている、確認できない場合はエンジンを止め、次の工程に移りましょう。
STEP2 ボンネットを開けた状態でエンジンを冷ます
ボンネットを開けた状態でエンジンルームに風を通し、エンジンを冷ましましょう。ここで注意してほしいのは、エンジンが高温の状態でラジエーターキャップを開けるのは絶対NGだという事です。これは、キャップを開けると高温の蒸気が噴出し、非常に危険だからです。また、キャップを開ける事で中の圧力が抜け、冷却水が一気に沸騰し、症状の悪化をまねく場合もあります。
STEP3 ロードサービスなどに連絡
個人で行う対処としてはここまでで、後はロードサービスや販売店に連絡し対応してもらいましょう。STEP1で冷却水の残量が残っている場合でも、冷却システムに何らかの問題が出ている可能性がある為、早めに整備工場などで点検してもらう事をお勧めします。
まとめ
今回は、自動車の故障として非常に恐ろしい『エンジンのオーバーヒート』について、その原因や対処法などをご紹介してきました。
近年の自動車は、非常に高性能化が進んでいますのでオーバーヒートによる故障などは減少していると言われています。しかし、これからやってくる夏の炎天下での走行時にはオーバーヒートは要注意です。オーバーヒートは基本的に定期点検で防ぐことの出来る故障ですので、きちんとチェックする事を強くお勧めします。
尚、オーバーヒートは急激に破損して故障するといった現象ではなく、どちらかと言うとじわじわ症状が悪化していくといったタイプの物です。したがって、本稿でもご紹介したような症状をいち早く見つける事で、自動車の致命的な故障を防ぐことも可能です。
オーバーヒートは、エンジンの載せ換えが必要になり高額な修理費用が発生したり、最悪の場合、自動車を廃車にしなければならなくなるような非常に恐ろしい故障です。しっかりと日々の点検を行い、大きな故障になる前に対処できるような体制を作るようにしましょう!