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交通刑務所は存在しない?事故の加害者はどのような処遇を受けるのか

自動車のマメ知識

有名アイドルグループの元メンバーが、2018年9月6日に、危険運転致傷罪で逮捕されました。飲酒運転に加えてひき逃げを重ねており、ワイドショーなどでもコメンテーターに「フォローしようがない」とコメントされています。

“交通刑務所”という言葉を聞いたことがある方もおられるかも知れません。悪質な交通事故を起こした人間が収監されると噂されている場所ですが、ほんとうに実在するのでしょうか?

今回は交通事故の加害者の法的扱いや、交通刑務所の有無などについてご説明いたします。

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交通刑務所は存在するのか

「交通刑務所」なるものが存在するわけはありませんが、市原刑務所など交通事故犯を中心に収容されている刑務所は存在します。刑期の長さや精神障害の有無、反社会組織の関係者なのかどうかなどで収監される刑務所は決まりますが、交通事犯に限らず基本的に受刑者は似通った境遇の者で集められます。

一般的に「交通刑務所」と呼ばれるところは交通事故で誰かを死なせてしまった人が行く場所ですので、刑務所内には慰霊碑が設置されており、毎日拝む時間が用意されています。また、刑務所内に教習コースがあるのも交通刑務所ならではでしょう。

前出の市原刑務所のほかにも、兵庫県にある加古川刑務所も「交通刑務所」として知られています。

市原刑務所の収容対象

市原刑務所の収容対象は、原則として「執行刑期4年未満」また、「交通事犯以外の罪状を併有していない」「以前の受刑歴がない」「心身に故障がない」人です。
刑期の3分の1が過ぎれば、大部屋に囚人は移動します。

交通刑務所は出入り自由?

免許停止者は、全員ではありませんが違反者講習を受けることによって、30日の行政処分を回避することができます。交通刑務所は、違反者講習(所)が寮になったものと考えればいいでしょう。

一般的な刑務所と違い、規律なども厳格ではなく、室内にものをおけるのが特徴です。ただし、自由に外出できると言ったことはなく、環境以外は他の刑務所と代わりがありません。

刑務所には色々な機械設備が設置されているのですが、加古川刑務所にも本縫いミシンやコンプレッサー、ルーターマシンなどが備え付けられており、通常の刑務所と施設内容はさほど差はありません。部屋に鍵はかかっていませんが、他の囚人の部屋に行くことは出来ないので、圧迫感がないだけで自由度が高いという訳ではないでしょう。

交通刑務所と刑期

交通刑務所の囚人は(あるいは交通事犯は)、特に問題がなければ刑期は短縮される傾向にあるそうです。1年の実刑判決受けた囚人が、そのまま1年過ごすことはほとんどなく、平均して1ヶ月か2ヶ月は刑期が短縮されています。

刑期を満了しないまま刑務所を出ることを「仮釈放」といいますが、法律上は刑期の3分の1を過ぎた時点で仮釈放の対象です。ただし、比較的刑期が短い人が多いと言われる交通刑務所であっても、3分の1程度の刑期で仮釈放されることはあまりありません。

満期まで刑期をつとめた人よりも、仮釈放された人のほうが再犯率が低いデータなどもあり、仮釈放制度の改善が叫ばれていますが、現状は何も進んでいないようです。

どういった人間が交通刑務所に行くのか

事故犯に明確な殺意があったと認められた場合は別ですが、基本的に死亡事故だけでは交通刑務所には収監されません。交通刑務所に主に収監されているのは

  • 飲酒や薬物などを摂取した状態での過失運転で死亡事故を起こした人
  • 飲酒運転を繰り返した人
  • 執行猶予中になんども交通事故を繰り返した人

などです。また、交通事犯全員が交通刑務所に入るわけではなく、さらに女性は一般の刑務所に入ることが多いです。

実刑判決が下る可能性はあるのか

結論からいいますと、飲酒運転とひき逃げを同時に起こしたとしても、前述の某アイドルグループ元メンバーの交通刑務所への収容確率は低いと言えるでしょう。交通事犯に対する刑罰の厳格適用の流れも影響しております。過去に(交通事故ではないですが)証券取引法違反や詐欺罪などで刑務所に収監された有名人は、通常のケースよりもかなり重い求刑がなされました。これは軽い求刑が国民に悪影響を及ぼすと考えられるケースでは、法律の適用内で重い刑罰がくだされる傾向があるためです。

ただし、元メンバーの場合は、2017年にワゴン車と接触事故も起こしているため、裁判官の心象もよくないと考えられる可能性があります。

交通事故と執行猶予

悪質な犯罪でない限り、罪を犯しても初犯ならば”執行猶予”がつきます。その期間中に犯罪を犯さないことを条件に、刑務所へ収監しない制度です。 100%ではありませんが、執行猶予中に再犯してしまうと刑期をそのまま受けることになるでしょう。

交通事故を起こしても、悪質な事故でない限り実刑判決がくだることは少ないそうです。とくに人身事故でなく物損事故の場合は、罰金刑で済むケースが多いそうです。

例外はひき逃げ(法律上の用語は”当て逃げ”)です。人身事故を起こした場合、加害者は負傷者に対して救援義務を負いますが、これに違反すると「危険防止措置義務違反」に該当します。

逃げた時間や範囲にもよりますが、(昏倒状態の被害者を放置するなど)悪質な人身事故の場合は実刑の確率が高まります。また器物破損のみの場合は、扱う法律が異なります。

当て逃げと”器物損壊”

器物損壊罪は、報告しようとしまいとあまり関係はありません。報告義務違反ではありあますが、違反点数が追加されるのみです。器物損壊で実刑判決を受けるケースは、罰金が払えない場合や短期で繰り返し行った場合、他には常習犯などに限られます。

過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪の違い

過失によって人を死傷させた場合、過失運転致死傷罪が適応されます。危険運転致死傷罪は、通常の走行を超えたレベル(危険運転)の結果、人を死なせた場合に問われる罪状となっています。刑罰は過失運転致死罪よりも重いです。

過失運転致死傷罪…死亡:7年以下の懲役もしくは禁錮又は100万円以下の罰金 / 負傷:同上
危険運転致死傷罪…死亡:1年以上20年以下の有期懲役 / 負傷:15年以下の懲役

全てを明らかには出来ませんが、”危険運転”とは酩酊状態の運転、信号無視、法定速度を大幅に超過した運転などが該当します。しかし、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪に明確な線引基準はないと言われております。2017年に起きた東名高速夫婦死亡事故を例に説明いたします。

2017年に東名高速道路で、パーキングエリアで道を塞いでいた加害者を注意した夫婦を、加害者はその後追走しました。トラブルを避けるために、夫婦は車から降りました。その夫婦は加害者に暴行された後、停止した車を避けきれなかった別のトラックに追突されてしまいました。夫婦は亡くなりましたが、直接の加害者であるトラックの運転手は過失が低いと見られたため、不起訴となりました。そして、暴行を行い夫婦を結果的に死に至らしめた加害者は当初過失運転致死罪として起訴されていましたが、過去に何度も交通トラブルを起こしていたことが発覚し、危険運転致死罪に罪状が変更され起訴されています。

このように、過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪に明確な基準はないと認識してもよいでしょう。
また、いわゆる「煽り運転」に関して、2018年1月ごろから厳罰化が始まっており、新たな法律ができる可能性もあるかも知れません。

交通刑務所を描いた本

「交通刑務所の朝」 著:川本浩司

実際に著者は交通刑務所に収監された経験があり、無免許による飲酒運転から交通刑務所に収監された経験があります。交通刑務所の規律はゆるいですが、それは囚人の反社会性が低いためです、それゆえに起こる罪意識の希薄さなども描いており、実態を知るのに重要な情報源となっています。

まとめ

交通刑務所は、刑罰を受ける場所というよりかは、更生施設としての側面が強いと言えるでしょう。当然ですが、交通ルールは厳密すぎるくらいに守って車を運転しましょう。

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