「車」と「事故」は切っても切り離せない関係です。そして、事故は毎回自家用車で引き起こされるわけではありません。借り物である社用車で事故を起こしてしまうことも当然あるでしょう。

社用車で事故を起こした際、責任の所在はどこにあるのでしょうか?今回は、社用車で事故を起こした時の賠償責任について解説していきます。

事故は運転手の責任問題

歩行者に悪意があったと見なされた場合などは別ですが、乗り物と歩行者とで事故が発生した際、「運転手側が悪い」と判断されてしまうものです。

乗り物と構造物の衝突事故でも、例えば現場に何かしら問題があり、運転手の過失によるものでないと認められなければ、運転手が悪いと判断されます。

通常の事故であれば、基本的に被害者と加害者とで話し合いが行われます。車メーカーが「欠陥製品」を販売していたと裁判所から判断されリコールが発生した場合や、ディーラーが車のスペックや状態を大幅に偽っていた場合は例外ですが、乗っていた車を販売した業者や、車のメーカーが事故に関わることはありません。

事故の賠償は、当事者間で争われるものといえるでしょう。しかし、仕事で社用車に乗っている場合は、また事情が変わってきます。

社用車で事故を起こしたらどうなる?

社用車とは、文字通り会社の車を指します。「会社の業務・用事に使う車」と覚えれば良いでしょう。個人タクシーは別ですが、タクシーも社用車に該当します。
もちろんタクシーでなくとも、会社が所有権を有するものは社用車であり、社用車は従業員の勤務時に利用されています。

社用車の利用時に、事故を起こしてしまうこともあるでしょう。しかし、用車で事故を起こした場合、前述した「当事者間の問題」ではなくなります。

「勤務時間内の事故」なのか「勤務時間外の事故」なのか

社用車の事故と言っても「勤務時間内の事故」と「勤務時間外の事故」に分かれ、責任の在り処などが変わります。
そして責任にも2通りあり、「使用者責任」と「運行供用者責任」に分かれます。

使用者責任とは

使用者責任とは「事業のために人を使用する者は、その事業によって第三者へ与えた損害への賠償責任を負う」という責任のことです。
わかりやすく言うと、「会社の業務で事故を起こした場合、その責任は会社にもある」ということです。これは民法第715条にも記述されています。

民法第715条の詳細は以下の通りになります。

  1. 「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」
  2. 「使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。」
  3. 「前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」

運行供用者責任とは

続いて運行供用者責任について解説します。

自動車損害賠償保障法3条に、こう記述されています。

  • 「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。」

こちらは自動車損害賠償保障法の第3条に書かれている「会社が従業員による車の運用によって利益を得ている場合、その車の起こした事故の責任を負う」という責任の事です。

使用者責任との違いは、運転によって利益が発生していると判断された場合に、適用される法律ということ。そのため従業員の業務中ではあっても、利益が発生するとは認められないという状態であれば、この運行供用者責任が適用されなかったりもします。

自動車損害賠償保障法での運行供用者責任の内容を要約すれば、以下の通りです。

自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。

ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

というような内容になります。

最終的に賠償するのは誰?

最終的に賠償責任が発生するのは運転手と会社のどちらか、あるいは両方となります。誰が賠償するのかは「業務中の事故」なのか「業務外の事故」によって分かれます。

まず業務中に社用車で事故を起こしてしまえば、業務中の事故という条件が満たされるため、「使用者責任」が発生し、会社に賠償責任が発生します。

そして会社は車を従業員に運転させたため、運行供用者責任も発生します。また当然ながら、事故を起こした本人にも賠償義務が生じます。

ややこしいので、使用者責任と、運転供用者責任の違いを記しておきます。

  • 使用者責任……使用者(多くの場合は雇用主)が、非使用者(多くの場合は従業員)が誰かに損害を与え、賠償責任が生じた場合、使用者が負担する賠償責任を指します。車の事故であるかどうかは関係ありません。
  • 運転供用者責任……自己のために自動車を使わせたとし、運転手が対人事故を起こしたとします。そのとき、車の所有者が損害を賠償する責任を指します。

業務外の事故

次に業務外の事故について。
こちらは会社の指示で社用車を利用していたのか、それとも無断で使用していたかによって責任の在り処が変わります。

前者の場合、業務外であっても会社の都合で社用車を利用していたため、運行供用者責任が発生します。
後者の場合、無断使用ということは会社側に利益があるとは言えないため、利益を得ていないと認められた場合は運行供用者責任が発生せず、賠償責任は運転手のみにあります。

業務時間外であるため、使用者責任は発生しません。

自家用車でも会社に賠償責任が発生する?

自家用車で事故を起こした場合、会社に賠償責任が発生するのかどうか、という事について解説します。当然ながら日常生活において自家用車によって事故を起こしても会社に賠償責任は発生しません。
しかし、「通勤・退勤中の事故」については別です。

というのも、通勤や退勤というのは「業務」に含まれているため、「業務の連続性」がある限りは、使用者責任と運行供用者責任が発生します。

この業務の連続性というのは、例えば退勤してそのまま家に帰らず、食事や遊びのために寄り道をした場合などは業務の連続性が無くなります。つまり、仕事が終わった=業務が終了したというわけではなく、仕事が終わり、そのまま家に真っ直ぐ帰るまでが業務内容であるという事になります。

まとめ

以上、社用車で事故を起こした際の賠償責任についての解説でした。基本的にどんな場合でも、事故が起これば運転手には必ず賠償責任が発生します。そのため、運転手のみに賠償責任があるか、運転手と会社にも賠償責任があるかの、どちらかになると覚えておけば良いでしょう。