自動車の運用上、最も恐ろしい事は『交通事故』です。交通事故は「自分は安全運転だから関係ない。」等と考えている方も少なくないものですが、実際には『いつ・どこで・誰にでも』起こりうることだと頭に入れておかなければいけません。
さらに『交通事故』の当事者になるときには、自分が被害者になるとは限らず、加害者として交通事故を起こしてしまうケースもある事でしょう。このような場合、事故に遭ってしまった人には様々な義務が課せられ、適切な対応を行わなければ、後々さまざまな不利益を受けてしまう可能性もあるのです。
また、交通事故を起こした時にはパニックになり、何もわからずに自分が不利益になる行動を取ってしまい後悔してしまう…なんてことも珍しくありません。交通事故の際には、間違ってはいけない初期対応や、事故現場でやってはいけない事などもあるので、今回は「事故を起こしてしまった…」といった時の対処法について、解説していきたいと思います。
事故を起こした人にある義務とは?
まずは、交通事故を起こしてしまった人に課される義務についてご紹介しましょう。自動車を運転している時には、どれだけ注意して運転していたとしても「絶対に事故を起こさない!」等といった事は言えませんね。そして、事故を起こしてしまった時には『道路交通法』によって様々な義務が課されるのです。交通事故を起こしてしまった人に課される義務は以下の3つです。
- 被害者の救護義務
- 危険防止措置義務
- 警察への報告義務
当たり前のように思える義務ですが、交通事故を起こしてしまった時には、パニックになって頭から抜け落ちてしまう…といった事も少なくありません。これらの義務は、怠ってしまうと罰則も規定されているので注意が必要です。
以下でそれぞれの義務を少し詳しく見てみましょう。
事故を起こした人に課せられる義務の詳細
交通事故を起こしてしまった場合、パニックになり「どうすればいいのか分からなくなる」等といった事は珍しくありません。しかし、上述したように事故を起こしてしまったドライバーには様々な義務が課せられます。間違ってもパニックになってその場から離れる等といった事がないようにしましょう。事故の際、課せられる義務は以下のものですので、絶対に覚えておきましょう!
被害者の救護義務
『被害者の救護義務』は、道路交通法72条1項前段に規定されているものです。これは、交通事故を起こしてしまった人は、事故の被害者を救護しなければならないという義務です。したがって、事故で怪我をしてしまった人がいた場合、応急処置や救急車を呼ばず放置してしまうと法律違反になってしまいます。
これを無視して現場を離れたりしてしまうと、いわゆる『ひき逃げ』との扱いになり『10年以下の懲役または100万円以下の罰金』という非常に厳しい罰則があります。
危険防止措置義務
『危険防止措置義務』も、道路交通法72条1項前段に規定されています。これは、交通事故の二次被害を防止する為、事故現場の危険物の除去、後続車両へ危険を知らせる為の措置などを義務付けています。『危険防止措置義務』は『被害者の救護義務』とのセット義務になっており、こちらも怠ってしまうと『10年以下の懲役または100万円以下の罰金』等の罰則が適用されます。因みに「物損事故」の場合でも適応され、適切な対処を行わなかった場合には『当て逃げ』と判断され『1年以下の懲役または10万円以下の罰金(危険防止措置義務違反)』の罰が適用されます。
警察への報告義務
『警察への報告義務』は、道路交通法72条1項後段に規定されています。内容はそのままで、事故を起こしてしまった場合には、警察に通報しなければならないという義務です。この義務は「人身事故」はもちろん、物損事故にも適用されるもので、被害者がいないから…、誰も見ていないから…等と、報告を怠ってしまうと『当て逃げ』になります。交通事故を起こしてしまった場合に課せられる義務は、上記の様に規定されています。非常に厳しい罰則もありますので、絶対に忘れないようにしましょう。
尚、これらの義務は、加害者のみに課せられていると勘違いしている人も多いのですが、道路交通法では『当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員』と書いてあり、加害者のみを限定しているわけではありません。つまり、交通事故の当事者となっている自動車に同乗している人や、被害者でも同じだけの義務があるという事ですので、注意が必要です。
事故を起こした際の初期対応とは
次は、交通事故を起こしてしまった時の『初期対応』としてやるべきことをご紹介します。交通事故の際には、パニックになってしまいがちですが、出来るだけ落ち着いて対処できるよう心構えが必要です。
安全な場所に停車し、被害者の救護
事故を起こしてしまった際には、まず落ち着いて安全な場所に停車しましょう。間違ってもそのまま走り去るなどの対応はとってはいけません。『ひき逃げ』となり、非常に重い罰則が適応されます。
その後、けが人の確認と救助をすぐに行ってください。必要であれば119番に連絡し、救急車を手配しましょう。尚、交通量の多い場所では、二次被害の恐れもあるので発煙筒や三角表示板などで後続車両に事故が起こった事を知らせるのもお忘れなく。事故の際には、目立った外傷がない場合でも念のため救急車を呼んだ方が良いでしょう。興奮して痛みを感じていなかった場合でも、その後落ち着いた時には痛みや後遺症が出る事も少なくありません。
警察に連絡する
けが人の確認や救護が終わったら、速やかに警察に連絡してください。警察への連絡は、上述したように義務です。警察への連絡は、その後の示談交渉での重要なポイントとなります。
事故現場の記録は自分でも取ってください。
警察が来るまでの間、ボーっと待っているのではなく、自分でも事故現場の記憶と、証拠となる『記録』を残すようにしてください。警察が来ると、正式に現場検証や状況見聞が行われるのですが、それまでにタイヤ痕などが消えてしまう可能性もあります。また、初期段階に思い出せる限り、お互いのスピードや停車意志、信号機の状況などをメモに取っておくと役に立ちます。
事故相手の身元確認
交通事故を起こしてしまった場合でも、自動車保険などに加入しているのであれば基本的に被害者と直接示談交渉をすることはありません。ほとんどの場合、保険会社が間に入り示談交渉を行うのですが、そうは言っても被害者への謝罪やお見舞いなどは必要になります。事故相手が名刺を持っている場合は、名刺を貰うようにすればいいのですが、ない場合には『氏名・住所・連絡先・加入している保険会社』等を確認しておきましょう。
目撃者の確保
事故当時、周囲に目撃者がいた場合には『証人』として同行してもらったり、後から必要になった時に証言してもらえるよう、連絡先を聞いておきましょう。事故当事者と利害関係のない第三者の証言は、示談交渉で話が食い違う時などに非常に役に立ちます。困ってから目撃者を探そうと思っても、なかなかうまく見つかるものではないので、出来るだけその場で確保しておくようにしましょう。
保険会社に連絡
保険会社への連絡は、警察へ報告した後等、出来るだけ早く行うようにしましょう。示談交渉などは、事故による後遺症の有無などが分かり、様子が落ち着いた症状固定の状態に入ってから等の方が良いのですが、交通事故があったという事実を伝えるのは早いにこしたことはありません。これを怠ると、いざ交渉が必要といった場合に、必要な資料が足りないなど、後手に回ってしまう場合があるからです。
自分自身も診察を受ける
最後に忘れてはいけないのが、自分自身もけがなどがないかきちんと診察を受ける事です。事故直後などは、神経も高ぶっており、痛みやしびれなどの自覚症状がないという事も多いので、注意が必要です。特に目立った外傷がない場合でも、むち打ちや最悪の場合、脳内出血を起こしている時などがあるのです。
逆にやってはいけない事は?
最後に、交通事故を起こしてしまった際に、その場で行ってはいけない対応についてもご紹介しておきます。
過剰な謝罪はしないように
もちろん『謝罪=責任を認める』という事ではないので、事故を起こしてしまった時に礼儀として相手に謝罪する事は必要です。しかし、礼儀の範囲を超えた、過度に自分の落ち度を認めた謝罪はやめましょう。
過度に自分の落ち度を認めてしまった場合、そこにつけ込まれて不当な条件を付きつけられるなど、余計に問題がこじれてしまう場合があります。謝罪する場合には、事故による不安や不快な思いをさせてしまった事による謝罪のみとし、事故原因や結果について言及することはしないようにしてください。
その場で示談交渉をしない
交通事故を起こしてしまった場合には、何とか事故をもみ消そうと、その場で示談交渉を行おうとする方がいますが、絶対にやめてください。多くの場合、警察や会社に知られるとまずい等といった理由ですので、上に述べた報告義務違反にもなる可能性があります。また、後々後遺症が出てきたとしても、「もう示談は済んだから」等と、なにも保証もしてもらえない可能性もあります。そのような交渉を持ちかけられたとしても「保険会社と相談します」等と、きっぱりと断りましょう。
まとめ
今回は、交通事故を起こしてしまった際に、どのような対応を取ればいいのか?という点についてご紹介してきました。実際に事故を起こしてしまった…といった場合には、多くの方がパニックになってしまい、まともな対応すら取れないという事は非常に多いものです。しかし、事故を起こしてしまった時の対応を間違えてしまうと、後々非常に困ってしまう状況にもなりかねません。特に、怖くなってその場を離れてしまった…等といった対応を取ってしまうと、『ひき逃げ』になってしまいますし、被害者の命にもかかわる可能性も大きく、非常に大きな問題になってしまします。
交通事故は、自動車を運転する人であれば「自分には起きない」とは絶対に言えない物です。したがって、今回ご紹介した内容は、絶対に頭に入れて自動車の運転をするようにしましょう!