自動車の名義人が死亡した際、その所有権が故人にある場合は相続人全員にとっての共有財産と見なされて、廃車(永久抹消登録もしくは一時抹消登録)をするにも各種の手続きが必要になります。
今回は名義人が死亡した際の廃車のために必要となる相続の書類や手続きについて紹介いたします。
廃車の手続きの前に相続と名義変更を行う
廃車をする前には、自動車の名義人が死亡した後にその車を相続しなければ廃車の手続きそのものを行うことができません。相続には2通りあり、1人でするものと複数人でするものがあります。相続人の人数によって陸運局に提出しなければならない書類が違ってきますので注意しましょう。
自動車の相続を分割せずに一人の方が行う時(単独相続)に必要な書類は…
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本(亡くなった名義人と相続人の関係性が証明できます)
- 除籍謄本(名義人の死亡が戸籍謄本で証明できない時に必要になります)
- 相続をする方の印鑑証明書
- 相続をする方の実印
以上の書類を準備した上で、相続の対象となる自動車の自動車検査証、車庫証明書、手数料納付書、自動車税申告書などを揃えて相続から名義変更の流れとなります。
複数の相続人がいる時(共同相続)に必要な書類は…
- 戸籍謄本(亡くなった名義人と相続人全員の関係を証明できます)
- 除籍謄本(名義人の死亡が戸籍謄本で証明できない時に必要になります)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の実印
- 新所有者となる人以外の全員の実印を押印した譲渡証明書
以上の書類を準備した上で、単独相続の時と同様の自動車検証、車庫証明書、手数料納付書、自動車税申告書などを揃えて新所有者が住む陸運局で名義変更の流れとなります。わかりやすく言うと、単独で相続するなら相続人の印鑑証明書と実印および遺産分割協議書が必要となり、共同相続するなら遺産分割協議書の代わりに相続人全員の印鑑証明書と実印が必要となるという考え方です。いずれにしても所有権の所在を明らかにしておかなければ廃車の手続きに進むことはできません。
相続と名義変更を行った後に廃車の手続きを行う
廃車には永久抹消登録と一時抹消登録があり、永久抹消登録は解体作業が発生するもの、一時抹消登録は車の使用を見合わせたい時に行うものという違いがあります。そのため、相続人となる人は自分がどちらの廃車方法をしたいのかを想定しておかなければなりません。
廃車(永久抹消登録)をしたい時は…
①自動車を手放す
解体業者、自動車整備工場などに自動車を持ち込み、引き取ってもらいます。
車検が切れていなければ自分で公道を走らせて持ち込むことも可能ですが、車検が切れてしまっていると違法となりますので業者に引き取りを依頼します。解体が完了したら、解体日とリサイクル券ナンバーの記載された使用済自動車引取証明書、また車体から取り外されたナンバープレートを受け取ります。リサイクル料金を未納の場合は、この解体の段階で支払わなければなりません。(車種によってリサイクル料金は違いますがだいたい1~2万円前後です。)
②永久抹消登録をするにあたり必要な書類を揃える
- 新所有者の印鑑証明書
- 新所有者の実印
- 自動車検査証
- 解体された時に返却されたナンバープレート
- リサイクル券
- 使用済自動車引取証明書
以上に加え、陸運局で準備されている申請書、手数料納付書、自動車税申告書を添えて廃車(永久抹消登録)の手続きを行っていきます。万が一、リサイクル券を紛失した場合でも再度リサイクル料を支払う必要はなく、専用端末機にて再発行を行えば廃車手続きに利用できます。
③陸運局で手続き
陸運局で手続きを行い、ナンバープレートを返納窓口に返します。
④永久抹消登録完了
永久抹消登録が完了した証明として『抹消登録証明書』を受け取り、手続きが完了します。
廃車(一時抹消登録)をしたい時は…
①一時抹消登録をするにあたり必要な書類を揃える
- 新所有者の印鑑証明書
- 新所有者の実印
- 自動車検査証
- 自動車から取り外したナンバープレート
以上に加え、陸運局で準備されている申請書、手数料納付書、自動車税申告書を添えて廃車(一時抹消登録)の手続きを行っていきます。
②陸運局で手続き
陸運局で手続きを行い、ナンバープレートを返納窓口に返す
③一時抹消登録完了
一時抹消登録が完了した証明として『一時抹消登録証明書』を受け取り、手続きが完了します。一時ということは、今後また同じ自動車を登録または永久抹消登録する可能性があるという意味ですから、一時抹消登録証明書は大切に保管することをお忘れなく。一時抹消登録では解体を伴わないためリサイクル券と使用済自動車引取証明書が必要無いと考えれば、その他の必要書類と手続きは共通していることがわかります。
ローンの残債がある場合の廃車について
ローンを完済していない場合、多くの場合相続人が残債を支払わなければなりません。
この手続きでは残債を含めて相続するという考え方になりますので、ディーラーやローン会社と新所有者との契約変更の運びとなります。ローンを完済していてもディーラーに所有権がある場合は、そのままでは廃車の手続きを行うことができません。所有権解除をしてもらってから各種の手続きの準備に取りかかりましょう。
まとめ
普通自動車は資産という扱いになるため上記のような書類や手続きが必要になりますが、軽自動車に関してはまた違う扱いとなります。なお普通自動車であっても、相続と並行して廃車するような場合(移転抹消)に限り名義変更の必要はありません。ローンに残債があり、所有者が故人ではなくディーラーやローン会社のままになっていると廃車の手続きが行えませんので、完済後に所有権解除を申し出ます。まずは自動車の所有者とローン残債の有無を確認してから手続きを進めるようにしましょう。