近年、TVのニュースなどでも頻繁に目にするようになった高齢者による交通事故。アクセルとブレーキを踏み間違えてお店に突っ込んでしまう事や高速道路の逆走、登下校中の子供の列に突っ込んでしまう等、毎日のように高齢者がらみの事故が報道される事もあり、社会問題にもなっています。
皆様もご存じの通り、日本国内はどんどん高齢化も進んでいますし、人口における高齢者の割合は、今後も増えていく一方だと予測されています。そうなると、こういった高齢者による事故が自然と減っていく事など考えづらいですし、もしご自身の家族が加害者になってしまうと考えた場合、非常に恐ろしいものです。
それでは、そもそも高齢になると事故を起こしやすくなる原因とは何なのでしょうか?今回は、高齢になると人体に起こる現象や、高齢者の事故が多い理由をご紹介したいと思います。
高齢者が事故を起こす要因とは?
それでは最初に、高齢者が事故を起こす要因とは何なのか?という点から考えてみましょう。
そもそも人間の体という物は、年齢を重ねていくと老化によって、様々な能力が衰えていくという事は皆さんも理解している事でしょう。これは何も高齢者と言われる65歳以上の人に限った話ではなく、40代ぐらいの方であっても「若い頃には普通に出来ていたことが出来なくなった…」なんてことはあるのではないでしょうか。
これが、高齢者になると事故を起こしやすくなる要因の一つで、『身体的特性』と言われる部分ですね。さらに高齢者の場合は、『心理的特性』もあると言われていますので、以下で詳しくご紹介しましょう。
身体的特性について
それでは高齢者における身体的特性を見ていきましょう。
上述の通り、人間は年を取っていくと老化で様々な機能が衰えてしまいます。特に以下の様な機能が衰えてしまうと、正常な運転は難しくなるでしょう。
- 視力が低下して、目が良く見えなくなる
- 耳が遠くなり、周りの音が聞こえづらくなる
- 反射神経が衰え、咄嗟のハンドル操作などが出来なくなる
高齢になると上記の様な問題が出てくることでしょう。
例えば、視力が落ちてしまうと、走行中の周りの景色が見えにくくなってしまいますし、信号や交通標識の見落としが多くなり、事故を起こしてしまう可能性が高くなります。さらに、高齢者になると視野も狭くなると言われ、周囲の状況の変化にいち早く気付く等といった事が出来なくなりますし、気付いたとしても反射神経の衰えで咄嗟の回避行動がとれないのです。
これが高齢者の事故が多い原因の一つです。
心理的特性について
次は高齢者の心理的特性を見てみましょう。もちろん、心理面ですので全ての高齢者に当てはまるという訳ではありませんが、一般的に以下の様な事が言われます。
- 注意力や集中力が落ちる
- 自己中心的な考えになりがち
- 長年の経験がある為、慣れてしまう事による思い込みが激しい
- 多くの高齢者が『自分は』若い頃と同じように運転できると考えている
高齢者ドライバーには、上記の様な心理的特性があると言われます。皆さんも「高齢者は頭が固くて頑固だな…」なんて思った経験はあるのではないでしょうか?実際に、年を取ると自分中心に物事を考えがちになる人も少なくなく、トラブルは増えるものです。
他にも、加齢による身体能力の低下を認めない高齢者が多いのも問題と言われています。高齢者の方の中には、年は取ったけど『自分は』若い頃と同様の運転スキルを持っていると思い込む人も多く、そういった方は乱暴な運転になってしまいますし、これが原因で事故が増えてしまうのです。実際に、MS&AD基礎研究所が全国のドライバー1000人を対象に行った「自動車運転と事故」をテーマとするアンケート調査では、高齢になるほど自動車の運転に自信があると答えており、80歳以上の高齢者となると70%以上の方が自動車の運転に自信があると答えています。
高齢運転者による事故の割合は年々増加
警視庁が発表している平成29年中の高齢運転者(第1当事者)の交通事故発生件数と、全体の事故件数に占める高齢者による交通事故の割合を表したグラフによると、高齢運転者が第1当事者となる交通事故は、10年前と比較すると減少している事が分かります。その一方で、高齢者による事故の割合は右肩上がりで、増えています。特に東京都内の総事故件数を調べてみると、平成19年が68,603件だったものが、平成29年には32,845件と半分以下になっているにもかかわらず、高齢者の交通事故件数はほとんど減少していないと言う状況がわかります。
これは、若者の事故は大幅に減少しているものの、高齢者の事故はほぼ横ばいで、全体からみると増えているとも考えられるような状況という事ですね。
もちろん若者のクルマ離れ等が指摘されているように、若者ドライバー自体が減少している事も事故件数の減少には関係あるのでしょうが、それにしても高齢者の事故が減らない理由には関係ありません。特に、今後に日本国内では、高齢者が増えていくと言う現実があるので、早急な対策が必要になりますね。
高齢者の事故は家族が監督責任を問われる場合も
厚生労働省の発表では、65歳以上の高齢者は7人に1人が認知症患者だと言われています。もちろん、これは検査を受け認知症だと判定された人だけの割合ですので、診断を受けていない人を考えるともっと多くなるでしょう。近年、この認知症患者の方の交通事故は社会問題にもなっており、早急な対策が求められています。
万が一、交通事故を起こしてしまった高齢者が、取り調べで認知症と発覚してしまった場合には、その家族が監督責任を問われる事になるかもしれません。さらに、自動車保険に入っていたとしても、認知症患者の場合、保険金が出してもらえないなんてこともあり、莫大な損害賠償が家族に及ぶ可能性もあるのです。
したがって、ご家族の中に認知症の疑いがある人がいれば、絶対に自動車の運転はさせないようにしましょう。そして、認知症だと発覚した場合には、早い段階で『免許の返納』をさせる必要があるでしょう。
現在では、自動車免許を自主返納した方は『運転経歴証明書』という物が発行され、これを提示すると様々な特典を受けられるお店なども登場しています。交通事故は、当事者だけでなく周囲の人にも大きな影響を与える物ですので、一度ご家族で話し合って見てはいかがでしょうか。
特典の詳細は、警視庁のページにまとめられていますので、一度ご確認ください。
まとめ
今回は、近年社会問題にもなっている高齢者による交通事故に関して、その原因等を詳しくご紹介しました。本稿でもご紹介しているように、全国的に交通事故の件数自体は減少傾向にあるものの、高齢者による交通事故の割合は増加の一途をたどっています。
このようなお話を聞くと、「高齢者の運転は危険だから運転しなければいいのに…」等と考える方もいるかもしれませんが、地方に目を向ければ、日常生活の足として自動車は欠かせないと言う現実もあるのです。大阪市内や東京都内等の都会で生活している人であれば、公共交通機関も発展している為、そこまで苦労はありませんが、地方であれば自動車が無いと生活が成り立たない現状があるのです。実際に、筆者の出身地などを考えてみると、少し大きな病院に通うにも自動車で数十分かかるなんて当たり前で、バスなんて1時間に1本来ればいい方といった感じです。このような場所だと、高齢者が徒歩だけで生活するのは、やはり難しいものなのです。
自動車の免許返納を行うには、外出時は送り迎えをしてあげるなど、家族のサポートも必要不可欠になるでしょう。さらに現在では、警察が高齢者向けに行う「シルバードライバーズ安全教室」等の啓蒙活動や、各自動車メーカーが安全装置の開発も急いでいます。
全ての人が安全に快適なカーライフを送れるように、自分には何が出来るのかよく考える必要があるのかもしれませんね!