自動車の処分を思い立った時に、ほとんどの方は「自分の自動車は売却できるのだろうか?」という事は考えるものですが、その他の細かな手続きについては頭から抜け落ちているという事も少なくありません。そもそも自動車を売却したいと思っても、手放そうと考えている自動車の状態によっては買取りを拒否されることも珍しい事ではありません。このように買取りを拒否されるような自動車であれば、基本的に廃車にするしかありませんが、自動車を廃車にするときには、自動車保険の事についても考えておかなければいけません。
自動車保険は、自動車を使用している際には、万が一に備えて、なくてはならない存在なのですが、自動車を廃車にして処分する際には無用の長物となってしまいますね。しかし、もう必要ない保険だからと何も考えずに保険を解約してしまうと、後々後悔してしまう事や、損してしまう事もあるってご存知ですか?そこで今回は、自動車を廃車にするときに行うべき保険関係の手続きについてご紹介したいと思います。
自賠責保険について
それでは最初に、自賠責保険に関してご紹介しましょう。自賠責保険は、正式名称「自動車損害賠償責任保険」と呼ばれる保険で、これは交通事故などによる被害者を救済する為に加入を義務付けられている『強制加入』です。強制保険と言う部分からも分かる通り、自賠責保険は自動車を登録する際に加入が義務付けられ、自動車を使用する限りは解約することもできません。因みに『自動車損害賠償保障法』に基づいて、自賠責保険なしで公道を走行した場合には「1年以下の懲役または50万円以下の罰金。また、違反点数が6点減点で免許停止」という非常に厳しい罰則があります。自賠責保険は、取扱いをしている各保険会社と契約を行い、車検時に契約が更新される仕組みとなっています。
自賠責保険には還付金制度がある
自賠責保険は廃車手続きが完了して初めて解約できるものです。また、保険の解約時に有効期限が1ヵ月以上残っている場合には、還付金を受け取る事が可能です。ただし、自賠責保険の解約や還付金については間違った認識をしている人が多いので注意が必要です。
廃車手続きが完了すれば自動的に自賠責も解約
これは間違いです。自賠責保険は、廃車手続きが完了しても自動的に解約されることはなく、また、解約を勧めてくる通知なども基本的に届きません。自賠責保険の解約は、廃車完了後、廃車したと言う証明書を持って、保険会社と解約の手続きを別途進める必要があります。手続き方法は保険会社によって異なりますので、一度確認しておきましょう。
還付金は『廃車が完了した日』から算出される
これも間違いです。自賠責保険の還付金額は「保険会社に解約申請した日から算出される」ものです。その為、廃車が完了してから「そのうち還付金申請すればいいや」とのんびりしていると返金される金額が減ってしまい損することになります。自賠責保険の解約関係でよくある勘違いは上記の様な物です。あくまでも「廃車しなければ解約が出来ない」という事であって、廃車手続きと保険の解約手続きを同時に進めているわけではないと言う認識を持っておきましょう。
任意保険はどうする?
自動車を所有する場合には、ほとんどの方が任意保険にも加入します。これは、自賠責保険では「人身事故での相手への損害賠償」だけしか補償されない為です。したがって、物損事故や自分自身の怪我への補償等、より広範囲な保証が受けられるように任意保険に入るのが一般的です。もちろん、自動車を廃車する際には、この任意保険も必要なくなるため解約した方が良いでしょう。しかし、任意保険の解約には注意しておきたいポイントがある為、覚えておきましょう!
任意保険の『等級』に注意しましょう
自動車保険には『等級制度』と呼ばれる物があり、等級によって保険料に違いが出てくるのです。自動車保険の等級は、1等級から20等級まであり、初めて保険に加入する時には基本的に6級からスタートします。その後、1年間無事故(あるいは事故を起こしても保険を使わない)であれば1等級ランクアップ、保険期間の1年間で1回事故を起こすと1~3等級下がるといった具合に保険の等級が変動します。等級は、上がれば上がるほど保険料の割引率が上がり、無事故で長期間加入していた方がお得になる物なのです。
しかし、廃車が完了したからと何も考えずに保険を解約してしまった場合、頑張ってあげた保険の等級がリセットされてしまうのです。もちろん、保険会社側もこういった状況の事を考えて、「保険の等級を維持できる制度」を用意してくれています。それは『中断』と呼ばれる制度で、読んで字のごとく、一定期間『保険契約を中断しておく』事を指しています。保険会社によって中断できる期間は違いますが、大体10年間程度の中断が出来るので、7等級以上の自動車保険があればぜひ『中断』しておくことをお勧めします。
自動車の買い替えなら『車両入替』を
自動車保険の補償はその自動車に対して掛けられている物のため、契約した時の自動車とは別の自動車で事故を起こしてしまった場合には補償を受ける事が出来ません。したがって、自動車を新しく買い替えるといった場合には『車両入替』の申請を行わなければいけません。この手続きを行う事によって、今まで積み上げてきた保険内容を古い自動車から新たに購入した自動車に移すことが可能です。ただし、どのような自動車でも『車両入替』が出来るわけではないので注意が必要です。車両入替が可能な自動車は一般的に以下の物ですが、保険会社によって細かな条件が決められている為、詳細は自分が契約している保険会社に問い合わせてみましょう。
- 自家用普通乗用車
- 自家用小型乗用車
- 自家用軽四輪乗用車
- 自家用軽四輪貨物車
- 自家用小型貨物車
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
- 自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
- 特種用途自動車(キャンピング車)
尚、車両入替に関しては、自動車の買い換えから30日間は、新旧どちらの自動車でも保証が受けられるよう猶予期間が設けられています。しかし、猶予期間があるからと車両入替を先延ばしにしてしまうと、補償を受けられない期間が出来てしまうケースがあるので注意が必要です。このような理由で、事故に遭った際に補償を受けられないなどとなると、目も当てられないので、納車日が決まった際にはすぐ手続きを行いましょう。
まとめ
今回は、自動車を処分する時の保険関係の手続きについてご紹介しました。保険関係の手続きは、細かな規定も多く制度もよく分からない為、後回しにしたいと言う方が結構多いのではないでしょうか?しかし、自動車と保険は切っても切り離せない関係であり、ドライバーを様々な面から守ってくれる非常に重要な物です。面倒くさがらずにしっかりと手続きを進めるようにしましょう。そうすることで、安心なカーライフを送る事が出来るようになりますよ!