自動車税が引き下げられる、という話が出てきています。なぜこのタイミングで自動車税を改正しようという動きが出てきたのか、そして本来自動車税とは、どうあるべきなのか、一緒に考えていきましょう。
日本の自動車税の実態
まずは自動車税の改正を語る前に、現在どれくらい課税されているのか確認してみましょう。自動車税は排気量と使用用途によって金額が細かく分けられています。以下は自家用車の自動車税の金額です。
参照:東京都主税局
- 1.0リッター以下…29,500円
- 1.0超〜1.5リッター以下…34,500円
- 1.5超〜2.0リッター以下…39,500円
- 2.0超〜2.5リッター以下…45,000円
- 2.5超〜3.0リッター以下…51,000円
- 3.0超〜3.5リッター以下…58,000円
- 3.5超〜4.0リッター以下…66,500円
- 4.0超〜4.5リッター以下…76,500円
- 4.5超〜6.0リッター以下…88,000円
- 6.0リッター超…111,000円
上記の金額を基準に、環境負荷の少ない車はエコカーとして認められ減税措置を受けられます。
海外と比べると
日本の自動車の維持費は世界一高いと知られていますが、特に税金が高く維持費がかかるという問題があります。では、海外はどれくらい自動車税がかかっているのでしょうか。例えばアメリカでは車の排気量ごとの課税はなく「ナンバープレート発行代」という名目で年間1,000円から15,000円ほどが必要になります。金額に幅があるのは、州ごとの差です。
ヨーロッパは世界基準からも、税金が高めに設定されていることが多いですが、自動車に関わる税金は日本と同額か、それより安めです。自動車税は日本と同様に排気量で分けられていることが多く、金額の上限は日本の方が高いです。また日本のエコカー減税のように、環境負荷の軽い車に対しては大きな減税措置がある国もあります。
アジアでも日本より自動車税が高い国は少ないです。ただし、韓国は自動車の購入価格を基準に税が課されるため、高級車に乗っていると税金も高くなります。
自動車税改正を求めるまでの流れ
それでは日本ではなぜこのタイミングで自動車税を改正することになったのでしょうか。今までの流れをみておきましょう。
2019年に消費税増税
政府は以前から決まっていた消費税増税を、景気への影響などを懸念して2度先送りしてきました。しかし2014年に8%になり、2019年10月には10%に引き上げられることが決定しました。2014年の増税時にもあったように、増税の直前では車や家など大きなものを駆け込みで購入する人が増え、増税後は消費が落ち込みます。
日本自動車工業会が要望
消費税が10%へ引き上げられることが決定したため、日本自動車工業会(自工会)は国に対し自動車税など自動車にかかる税金の引き下げを要求しました。自工会が提出した「平成31年度税制改正に関する要望書」では、自動車税について具体的に1.0リッター以下の自家用車の自動車税を軽自動車と同等程度まで引き下げ、それを起点に排気量に応じて全体的に減額をするよう、要望しています。
2018年9月に行われた自工会の定例記者会見で、自工会会長でトヨタ自動車株式会社の代表取締役社長の豊田章男氏は、この要望書について以下のような説明をしました。
過去に行われた消費税増税の際には、年間の新車購入台数は数十万から100万台も減少しており、その後も購入台数が増えていません。さらに2019年の増税時は30万台程度減少すると試算されており、雇用に対しても影響を及ぼすことが予想されます。税金が下げられないのであれば、車の維持費にかかる税金を下げる必要がある
と述べました。特に自動車税は毎年の大きな負担となっており、車離れの原因ともなっていることを強調しています。
国は税率引き下げに向けて調整
このような要望を受けて国会では2019年10月の消費税が増税になるタイミングと合わせ、自動車税を引き下げられるように調整を始めました。しかし、自工会が求めたほどの引き下げ率ではありません。具体的には最も排気量の少ない1.0リットル以下のものが4,500円の引き下げ、1.0~1.5リットルでは4,000円の引き下げなど、です。1,000円しか引き下がらない排気量帯の車もあり、それほど大きな減税にはなりません。
今回の減税額は自工会が求めた金額と大きな差がありますが、日本の税収状況を鑑みると仕方のないことなのかもしれません。日本の税収は100兆円といわれており、その8%が車関係の税金となっています。自動車税を引き下げると、国としての収入が減ってしまうので、要望ほどは下げられなかったのです。今回の減税案でも1,300億円の減収が見込まれており、エコカー減税対象車をより高い基準に絞るなどして財源を確保する予定です。
今後の課題
今後、課題となるのは自動車税を始め、車関係の税金の扱いです。現在は車関係の税金の半分が一般財源として使われています。車関係の税金は本来車が走る道路を作るための財源として使われ、結果的に自動車ユーザーの利便性向上につながるものでした。しかし、高い税金を納めているのに、現在は車を使用するユーザーに還元できていないので不満は大きくなるばかりです。
上記した通り自動車税は税収で大きな割合を占めているため、これ以上税率を下げることは難しいでしょう。国はユーザーに還元する割合を増やして、より良いサービスを提供することで現在の税率を理解してもらう努力が必要となります。
そのほかの変わる点
自動車税の改正とともに、自動車に関わる税金がいくつか変わります。代表的なものを紹介します。
自動車取得税の廃止
自動車取得税は2019年10月をもって廃止されることが決まっています。現在は車の購入時に約3%納税しています。
エコカー減税
エコカー減税は2017年から段階的に変更されています。自動車税では国が定める基準を満たした車に対し、税金を軽減するという制度です。今まではエコカーであれば全てが対象車となり、減税されていました。しかし、今後はより環境に優しい車のみがエコカーとして認められることになります。具体的には排気量と重量が少ないコンパクトな車がエコカーとして定義されています。また車検を重ねるごとに税率が上がっていく場合もあります。
まとめ
自動車税は2019年10月の消費税増税に合わせて引き下げられることとなります。ただし、日本自動車工業会が求めた大幅な減税とはならず、最大4,500円、排気量によっては1,000円だけの引き下げ幅となりました。国としては車関係の税金は大きな収入源なので大幅に引き下げられなかったのですが、このままでは車離れが進んでしまうのではないかと心配されています。今後、国は車関係の税金をいかにユーザーに還元していくのかを検討していくべきなのではないでしょうか。
また消費税増税に合わせてさまざまな税のシステムが変わります。まだ決定していないものも多いですが、新車購入のタイミングや廃車にするタイミングなどを見極められるように、常に最新の情報を集めておくと良いかもしれません。