自動車とは切っても切り離せない関係である交通事故。交通事故で相手をケガさせてしまったとき、入院費用とは別に慰謝料を支払う必要があることもあります。相手にケガをさせてしまった場合や、相手にケガがなかった場合など、今回は交通事故の慰謝料について解説します。

乗り物を運転する以上、常につきまとう交通事故の危険

自転車、バイク、自動車……乗り物を運転する以上、歩行者や対向車、建造物に対しての交通事故の危険性はつきまといます。車というものが一般的なものになってから、現在まで安全性能は向上し続けています。しかし、それでもまだ完全に交通事故を無くせてはいません。

いくら運転手が気をつけていたとしても、いくら安全性能が高くても、急に目の前に相手が出てきてしまうと急には止まれません。速度を100から一瞬で0にはできないのです。

今ある技術で可能な限り、一瞬で止まれる車を作ろうとするのであれば、進行方向とは逆ベクトルに一瞬で膨大な推力を生むジェットブースターを搭載するか、あるいは地面へ杭を打ち込むような機構が必要です。

前者はまず別の安全性問題が発生してしまう上、ジェット燃料が必要になります。後者は道路を損傷させてしまいます。つまりどちらも現実的ではありません。したがって、交通事故というものは、車と切っても切り離せない関係にあるのです。

「自分は事故を起こさない」なんて根拠のない自信をもつより、交通事故を起こしてしまった際に必要な事や慰謝料の知識を身に着けておく方が、ずっと良いドライバーだと言えるでしょう。

交通事故の際に発生する慰謝料

それでは万が一交通事故を起こしてしまった場合の慰謝料について解説していきましょう。

人身事故の場合、慰謝料は3通りに分かれます。

1つは「入通院慰謝料」。入院あるいは通院を基準に算出される慰謝料です。

2つ目は「後遺障害慰謝料」。ケガによって何らかの後遺症が発生した場合に支払う慰謝料です。

3つ目は「死亡慰謝料」。被害者が死亡してしまった際に遺族へ支払う慰謝料になります。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は更に3つに分けられます。

「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」です。

これらはそれぞれ強制保険(自賠責保険)で補償される額を基準にするか、任意保険で補償される額を基準にするか、弁護士基準は「過去の記録」で支払われた額を基準にするかといった違いがあります。基本的には弁護士基準>任意保険基準>自賠責基準の順番で慰謝料が増額します。

それぞれ計算式が存在しているため、どれくらいの額を支払う必要があるかをある程度把握することができます。また、後遺障害慰謝料と死亡慰謝料は入通院慰謝料とは別の計算方法によって算出されます。

自賠責基準の計算式

まずは自賠責基準の計算式から。入通院慰謝料を自賠責基準で計算する場合「入院日数+通院日数」と「入通院期間に実際に通院した日数x2」の内、低い方に4,200円をかけて算出されます。

病院が決定した入院日数と通院日数の合計が85日だったとします。

その85日の通院日数の内40日病院に通った場合、40日を2倍した80日が実通院期間として算出されます。そしてこの場合入通院日数85日よりも実通院期間80日の方が少ないため、80日に4,200円をかけて算出される「336,000円」が自賠責基準における慰謝料という事になります。これはあくまで一例で、実際にどれだけ日数がかかったかによって変わります。

次に後遺障害慰謝料を自賠責基準で計算する方法です。

こちらは等級できっちり定まっており、後遺症の内容によってどの等級に当てはまるかが決められます。最低額は第14級の32万円で、最高額は要介護第1級の1600万円です。こちらに関しては一覧表が存在するため、計算する必要がないことから把握しやすいでしょう。

問題はこの後遺障害慰謝料に付随して支払う必要がある「後遺障害逸失利益」というもので、これは要するに後遺障害によって労働能力が低下してしまった際に、その後の就業可能年齢までに得られたはずの収入分の損害の事です。「基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除率」によって算出されます。

基礎収入は職業・地位・時期によって変わりますし、労働能力喪失率も後遺障害の具合によって変わります。具体的な数字を出しにくいため、計算式で覚えておかないと、実際にどれだけ支払う必要があるのかわからなくなってしまいます。

そして死亡慰謝料を自賠責基準で計算する方法です。

まず、死亡した本人への慰謝料は一律350万円であり、遺族である請求権者の数によって更に増えます。請求権者が1人の場合は350万+550万円、2人の場合は350万+650万円、3人以上の場合は350万+750万円です。そして死亡した本人に被扶養者が居た場合、更に200万円追加されます。

更に死亡した場合、後遺障害と同じ様に逸失利益が発生します。

「基礎収入×(1-生活費控除率)×就業可能年齢に対応する中間利息控除率」という計算式で算出されます。こちらも具体的な数字を把握しずらいため、計算式だけはきっちり覚えておきましょう。

任意保険基準と弁護士基準の計算式

次に任意保険基準と弁護士基準の計算式について解説します。

入通院慰謝料の計算から自賠責基準とは異なった計算方法となっており、通院月数と入院月数によって決められている額を足した数値が慰謝料となります。例えば通院一ヶ月だけで治療が完了した場合は通院一ヶ月分の額が慰謝料となります。通院一ヶ月と入院一ヶ月で治療が完了した場合は、通院一ヶ月分+入院一ヶ月分の額が慰謝料となります。

この場合、任意保険基準が通院一ヶ月で「12.6万円」、入院一ヶ月で「25.2万円」なのに対し、弁護士基準では通院一ヶ月で「28万円」、入院一ヶ月で「58万円」と倍以上異なります。

後遺障害慰謝料に関しては自賠責基準と同じですが、自賠責基準よりも弁護士基準の方が倍近く高く、任意保険基準では弁護士基準の大体7割ほどの金額に設定されています。

死亡慰謝料

最後に死亡慰謝料。

死亡慰謝料の場合、弁護士基準は「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」によって定められた額が請求されますが、任意保険基準は「保険会社の都合」によって算出されるため、どれくらい支払うことになるかは保険会社によって変わってきます。

大抵の場合被害者側は弁護士基準で請求しようとしてきますが、弁護士基準と任意保険基準には請求するための事故証拠などが求められるため、示談交渉次第では拒絶することが可能です。

もちろん支払わなくて良いというわけではなく、あくまで慰謝料が減額される程度の交渉です。

相手がケガをしなかった場合の慰謝料

最後に、交通事故が発生したが被害者がケガを負わなかった場合に慰謝料を支払う必要があるのか?という事を解説していきます。

簡潔に言うと、「裁判と本人の和解交渉次第」です。

少なくともケガをさせてしまった場合、それに対しての慰謝料は発生します。

しかしケガが無い場合、慰謝料そのものは発生しません。だからといって払う必要が無いというわけではなく、事故によって精神的に苦痛を覚えたり、トラウマができてしまった場合などは、精神的苦痛に対する慰謝料を請求されることがあります。

ただこちらは裁判によって判決が行われるまで支払うべきかどうかがわかりません。裁判前に和解交渉を行い、支払わないと拒絶して裁判に望む事もできれば、交渉によって慰謝料を決定し、それを支払うという方法も存在します。

最終的な決定権は裁判官にあるため、例えば「相手が急に飛び出てきた所を、間一髪ブレーキや回避が間に合った」という状態であれば、ドライブレコーダーなどの証拠を用意することで、支払わなくても良いと判決されることもあります。

まとめ

以上、交通事故の慰謝料について解説しました。

複雑な計算式や、ケガの具合・後遺障害の有無・事故の原因や状態によって増減し、また保険会社によって補償内容が変わったりします。そのため、具体的な額を知りたい方は、過去の事故事例などを調べてみると良いでしょう。