役員報酬の過少申告を始めとした修正・不正の疑いにより、逮捕されることになったカルロス・ゴーン氏。今回は実際にどういった容疑だったのか、逮捕されるまでの過程などを解説いたします。まずは、この人物が一体どういった人物なのかを見ていきましょう。

「カルロス・ゴーン」氏とは

カルロス・ゴーン氏は、元々フランスのタイヤメーカーミシュランでの業績を評価され、後にフランスの自動車会社「ルノー」の上席副社長へとスカウトされた人物です。

後述する実績も合わせて、スカウトされた後はルノー社の業績を回復させており、経営手腕に関しては評価が高い人物でした。

1999年、当時莫大な有利子負債を抱えていた日産は、経営不振により財政危機に瀕していました。

そんな状態を脱するために、日産はルノー社と資本提携を行う事になります。それによって上席副社長であったカルロス・ゴーン氏は、ルノー社上席副社長兼、日産自動車最高執行責任者(COO)に就任することになります。

そして後に日産自動車の最高責任者兼社長、ルノー社の最高責任者、ルノー・日産アライアンスの会長兼最高責任者という、3つのCEOを務めることになります。

カルロス・ゴーン氏の改革

そんなカルロス・ゴーン氏がまず日産で行ったのは、徹底的な「コストカット」です。日産は多くの資産を蓄えていましたが、同時に有利子負債も抱えていました。カルロス・ゴーン氏はそれらをバッサリと切り捨てる事で、有利子負債を削減し、日産を健全な企業へと持ち直すことに成功します。

村山工場や座間工場の閉鎖、不採算の子会社の切り捨て/廃止など、コストカットばかりがメディアから注目されていたカルロス・ゴーン氏ですが、「新型フェアレディ」や、日産の象徴ともいえる「GT-R」の開発予算を組み直し、販売網を拡大したのも事実です。コストカットという面で比較されることのある三菱の益子修氏と決定的に違うのは、コストカットするだけではなく、その後の展開も主導したことでしょう。

(益子修氏もカルロス・ゴーン氏も、組織のトップを不本意ながら下りたという点では、同じといえば同じです)

日産の建て直しを終えたカルロス・ゴーン氏は、日産の経営を日本に任せていましたが、リーマンショックの影響などによって自動車産業が縮小傾向にあった事情もあり、日産は「利益を出すよりも損益を出さない」という守りの姿勢になってしまいます。

具体的には、「出荷台数を少なくすれば、結果的に損をしたとしても台数が少ないから損も最小限で済む」といったような姿勢です。

2015年、そんな状態の日産の業績を見たカルロス・ゴーン氏は、再び陣頭指揮を執ることになりました。

問題を徹底的に洗い流し、激論を重ねた結果2017年には、なんと32年ぶりに世界販売台数がトヨタをおさえ2位へと浮上します。これらの実績を鑑みても、カルロス・ゴーン氏に能力があるということは疑いようは無いでしょう。

逮捕までの顛末、どんな理由で逮捕されたのか?

経営手腕に長けていることは、人格が清廉潔白であることとイコールしません。

カルロス・ゴーン氏が逮捕されてしまいましたが、その理由の1つが「役員報酬の過少申告」です。金融商品取引法違反の疑いがもたれています。

役員報酬とは、取締役などに支給される報酬のことで、言ってしまえば会社の重要なポストに付いている方への給与です。「給与」とは経営者が従業員に支払うものなので、社長や会長の給与というのはちょっと意味がおかしくなります。一般的には、役員報酬と表現されています。

さて、そんな役員報酬の額に関して、カルロス・ゴーン氏は「49億」であると公開していました。一般人からすれば途方もない額ではありますが、実はカルロス・ゴーン氏が得ていた役員報酬は「99億」であると言われています。途方もない過少申告であると言えるでしょう。

役員報酬というのは株主総会で決定され、株主総会というものは文字通り日産の株の多くを所有している投資家、つまり株主達によって構成されています。

高い役員報酬は、株主に批判されやすい要因であり、それを躱すために過少申告を行ったとも言われていますが、現状本人の口から理由は出ていません。

逮捕までの顛末

そんな不正を行ったカルロス・ゴーン氏は、なぜ逮捕されてしまったのでしょうか?確定はしていませんが、内部告発がキッカケであると言われています。「目に余る不正行為をカルロス・ゴーン氏から指示された社員が、耐えかねてその社員が捜査員と司法取引を行い、内部告発を行った」とも噂されていますが、2018年12月現在、詳細は明らかになっておりません。

カルロス・ゴーン氏逮捕によって、どこに影響を及ぼす?

カルロス・ゴーン氏が逮捕された事は、ただ「会社のトップがいなくなった」だけのことではありません。その理由をご説明致します。

日産とルノー社との関係

前述の通りルノー社はフランスの会社であり、日産は日本の会社です。一企業の問題にはとどまらず、ゴーン氏の逮捕は国際的な問題になりつつあります。

株価

まず1つ目の影響、それはずばり株価です。

株式会社の会長の不祥事なのですから、株の買い手からの信用は下がります。株価も6.2%ほど急落しました。三菱自動車の株価も同様に下落しています。そしてルノー社もなんと一時15%も急落しました。一時期に比べ回復しましたが、まだまだ予断を許さない状況です。

日産とルノーの今後

2つ目はこれからの日産とルノー社。

会長であるカルロス・ゴーン氏が逮捕されるということは、その間会長が居なくなるということであり、日産の経営陣が変わる可能性があることでもあります。解説の通り、カルロス・ゴーン氏は会社に改革を迫った人物であり、日産の経営方針もまた変わるかも知れません。ただ、日産経営陣はむしろ経営陣を調整できるため、歓迎しているとも見られています

自動車業界

3つ目は自動車業界そのもの。

カルロス・ゴーン氏の逮捕により、自動車産業全体に影響が及ぶ可能性が考えられます。なぜなら、そもそも不正できる環境が無ければ不正は発生しないためです。つまり「カルロス・ゴーン氏が不正できる日産という会社はどうなんだ?」という話になります。そしてこれは他の自動車会社にも言えるでしょう。「日産のカルロス・ゴーン氏がこんな不正をしていた」「他の自動車会社も何か不正しているのではないか?」という疑いが生まれてしまうのです。

日産はカルロス・ゴーン氏を”悪者”にしたい?

カルロス・ゴーン氏逮捕直後に日産自動車社長の西川社長の記者会見が行われました。この記者会見において、不正を行ったカルロス・ゴーン氏が悪い、その罪を暴いたというような事を強調した発言が目立っていました。

権力をカルロス・ゴーン氏に集中しすぎた、という事が今回の不正の原因であると語りましたが、社長にも権力はあるはずです。そのため、「日産経営陣はカルロス・ゴーン氏が逮捕されることを歓迎しているのではないか?」と一部メディアは推測しています。

まとめ

以上、カルロス・ゴーン氏の逮捕と、その顛末について解説しました。ここ数年は、燃費データ改善や、エアバッグ問題など、自動車メーカー関連の不正事件が多く報道されています。今回の件は責任者の不正申告の疑いですが、日産の今後の対応はどうなるのでしょうか?

日産の今後の動向に注目しましょう。